電子カルテの導入が病院を変えた!

2019/02/08

デジタル化のメリットについて具体的に理解していただくために、実際にデジタル化した病院では、医療現場がどのように変化したのか、少しお話しします。

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 平成26年時点における一般診療所の電子カルテ導入率は35%と低めですが、400床以上の一般病院では約77%に達しており、今後も普及が進むと考えられています。

 電子カルテの導入には、相応のコストがかかります。それでも多くの病院がデジタル化に踏み切っているのは、なぜだと思いますか?

 コストに見合うだけの、メリットがあるからです。

 紙媒体のカルテを使っている場合、医師は診察前に、カルテを保管している棚から患者のカルテを探して抜き取らなければなりません。レントゲン写真や心電図、エコーなどの検査結果もすべて紙媒体ですから、必要に応じてそのつど取りに行かなければなりません。理学療法士が骨折患者のリハビリ計画をたてるときも、レントゲン室に足を運び、レントゲン写真の保管場所から該当患者のレントゲン写真を見つけ出して、確認しなければいけないのです。

 また、患者がレントゲン撮影を受けたときは「検査→現像→医師による確認→診断」という過程が必要であり、患者は検査を受けてから医師の判断を聞くまで、長い時間を待合室で過ごさなければなりません。

 電子カルテを導入すれば、医師はキーボードを叩いて名前等を検索するだけで、瞬時に目的のカルテを呼び出すことができます。レントゲン撮影が必要でも、撮影後すぐに医師のパソコンに画像データが届くため、スムーズに診断できます。医師は患者にその画像を見せて「ここに影があります」とマウスで線を引いて示したり、以前の検査画像と並べて治療の効果を視覚的に伝えるなど、効率的かつ効果的なインフォームドコンセントが可能になります。

 その患者に行った治療や投薬、検査結果などのあらゆるデータを電子カルテに紐付けして、院内ネットワークで共有できるようにすれば、データ閲覧の権限を持つ医療職の人々はいつでも必要な情報を閲覧できるようになります。資料を元の棚に戻す必要がなく、ボタンひとつでファイルを閉じられるため、管理も楽になります。

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 とくに総合病院では、複数の専門科で治療を受けている患者さんの医療情報を共有することで、他科で行った検査や投薬の重複を回避し、患者さんの心身の負担と経済的負担を軽減できるという大きなメリットがあります。

 また、さきほど説明したように、レントゲンや心電図などの検査結果を時系列で並べて治療効果の有無を確認するなど、必要な情報のみを抽出できるのは、デジタルならではの機能です。

 その他にも、医療事務との連動による会計の迅速化、処方箋データの送信による薬局との連携など、あらゆる面で効率化が図れるため、コストがかかるという問題以外は、デジタル化のデメリットはほとんど見当たりません。むしろ「デジタル化しないデメリット」の方が大きいかもしれません。

 医師が一人の患者にかけられる診察時間は限られています。診療に無関係な部分でかかっていた時間を短縮することで、治療に不安や疑問はないか、病状に変化はないか尋ねたり、患者さんからの質問に丁寧に答える時間を確保できます。かつては「30秒診察」という言葉が流行るほど、医師と患者のコミュニケーションは不足していました。コミュニケーションがしっかりとれる環境を作れば、信頼関係が構築され、医療の質も向上します。

 医師の仕事そのものは、義肢装具士同様、デジタル機器に置き換えることができません。しかしデジタル技術を導入して効率化を図れば、患者との対話に時間をかけることができます。つまりデジタルとアナログの融合により、医療サービスの質を向上させることができるのです。